2020.01.11 07:2312月:過ぎて至る。気がつけば1月も10日が過ぎていた書こうと思って何度も筆をとったけれど書けなかった。ふと、なぜ無理に書く必要があるのだろう。そんなことを考え始めたら納得できる答えが周囲に見当たらなかったからそのまま今日に至った。私小説は小説のつもりで描き始めた8割を実際にあったこと、2割を妄想で...
2019.12.02 07:0611月 巡り巡る。随分前から、我が家の洗面所の壁に貼られている一枚の写真があった。写真といっても原板ではなく印刷の切り取りだ。諏訪のマスヤゲストハウスに泊まった時に貰った、写真展のDMの切り抜き。波紋と光がきらめく写真は気がつけば僕らの日常の景色になっていた。切り抜いてしまったから、誰が撮影した...
2019.10.31 14:0510月:うりふたつ。先日、実家に遊びにいった際、自分が子供頃の写真を見て驚いた。息子の十一と幼少期の自分の顔が「瓜二つ」だったのだ。そうなると不思議なもので、完全に妻の佳子に似ていると思っていた息子の一挙手一投足が、なるほど、自分に似ているかもしれない・・などど感じる様になった。人間とは単純な生き物...
2019.10.05 04:099月:なにかをなくす。 気がついたら9月が終わっていた。10月初頭、稲刈りの終わった田んぼにトンボがたくさん飛んで、ススキが静かに揺れている。読書には最適の季節だ。そう思った。だけど、よく考えてみたら四季を通していつだって、僕は読書に最適な場所を持っている。さながらロマニーのように家中を彷徨い。昼夜を...
2019.08.31 05:538月:澄んだ眼両手でしっかりと抱きかかえると、彼はいつも斜め上を見上げる。産まれてきて1ヶ月目の世界は、彼の眼に、心にはどう写っているのだろう。今しか見れないその世界を、ほんのすこしだけ覗き見したい。そんな気持ちになる。そう言えば産まれてくる少し前に「鮑のつがいを食べると眼が綺麗になる」という...
2019.08.01 03:127月:実感。言葉は無力だな。そう思った。腕の中でスヤスヤと眠る我が子の尊さを表す言葉が浮かばないのだから。日課のように何らかの文書を書いているのに、この人生の感動と感謝を端的に言い表わす言葉が浮かばない。言葉は無力だな。そう心から思う。とはいえ、それはそれでいいのだろう。喜びや悲しみは心の内...
2019.06.30 04:286月:梅雨模様6月某日、梅雨真っ盛り。BGMは荒井由実「雨のステイション」国府町は霧が深い。谷あいの集落は午前中、深い霧に飲み込まれる。仮に天気が良くても青空が顔を出すのは正午過ぎだ。それでも朝晩は肌寒く、窓を開けて寝れるようになるのはもう少し後になるだろう。むせ返るような森も匂い、そして嬉々...
2019.05.31 14:505月:いらっしゃいませはいわないうちでは「いらっしゃい」を言わない。「こんにちは、ゆっくりしていってください」と言うようにしている。ここはお店だけど、お店である以上に僕らの暮らす家なのだ。そんな家に「ただいまー!」と言って帰ってくる友人が数人いる。僕らの営みは全く丁寧ではないし、ましてやここは綺麗でもなんでもな...
2019.04.30 05:484月 居候と個性と家族の話。 「ねぇねぇ、あさぴょん、なんか荷物届いたよ!」 懐かしようなそうでもないような聞き覚えのある声で目が覚めた。 あぁ、そうだ今月は居候がいたんだ、馴染みすぎていてすっかり忘れていた。 東京から定期的に我が家にやってくる彼女は陶芸家で、縁あって今年の夏に飛騨に移住してくること...
2019.03.25 06:583月 とけてなおのこる。「ねぇ…15センチくらい積もったよ。」 トイレから戻ってきて冷えた身体で布団にもぐりこんできた佳子がそうつぶやいた。例年にないほどの暖冬だった今年、数日前には市内で早咲きの桜の蕾が膨らんでいるのを見かけたばかりだった。入学式に雪が降ることもある飛騨地域のことだから、とりわけ驚いた...
2019.02.17 07:302月【ゆっくりとふる】「こちらでは随分ゆっくりとふるんですね…」 じっと窓の外を眺めていたお客様が、そう小さくつぶやいた。パソコンとにらめっこをしていた僕は、顔を上げて格子窓の方へ眼を向けた。「あ…そうか、海沿いでは湿って重たいんですよね」「えぇ、こんなふわふわしたの初めて見ました…」 ところ変われば...
2019.01.19 04:26一月『探偵と焚き火の守り』「ねぇ、財布知らない?確かに枕元に置いたはずなんだけど見当たらないんだよ…」 彼女と付き合って十三年、夫婦になってから八年が経った。その間にぼくは何度このセリフを口にしたのだろう、なくすのは財布だけじゃない、車のカギや、玄関のカギ、ひどいときには眼鏡だって見失う。おおよその原因は...