展示室 4’33”


物言わぬモノを見つめる時

ガラクタであるはずの目の前の器物と

呼吸のリズムがぴったりとあうような感覚に包まれる時がある。


それは弥勒菩薩の前に座した時

道端で拾った鉄くずの輪を見つめる時

ウェグナーのデイベッドに深く座る時

バラガンの図集をめくる時

友人の描いたちいさな絵画を見つめる時

窓で切り取られた山の木々を見つめる時

森の中でふと立ち止まった時

波に揺られ雲を仰ぐ時

喧騒が止んだ早朝の青白い道に立った時


僕らは物言わぬ世界と確かに言葉を交わしている

今ここにいるという空気を、胸いっぱいに吸い込むことができる。

いたずらに言葉を交わすことだけが対話ではないのだろう。

誰かに話したくなるようなそんな瞬間だけが

心の中でいつまでもいつまでも輝き続ける


僕はただそれを受け止めたい。

ただただそれを受け止めたい。


普段は口にしない

この場所に付けた名前は


 4’33”