六冊目 【断片的なものの社会学】
断片的なものの社会学
著者:岸政彦
出版社:朝日出版社
社会学者の筆者が実際に出会った「解釈できない出来事」を記録したエッセイ。
この本に納められた物語は、とるにたらないものばかりで、とりたてて語るほどの物語ではない、言葉にしたら途端に陳腐になるようなそんな記録。
実写化や映画化できないようなそんな物語、本当はこの世界に暮らす僕にもあなたにも書ききれないほど、たくさんの物語がある。
それらは語ることも書き残されることもなく生まれては消えていく。この本は、そんな物語に断片的を切りとっている。
はじまりもおわりも唐突で、旅先で偶然言葉を交わした人との会話に似てる。
社会学は答えを見つける学問ではない。
生きる現実に巻き込まれながら、頭で理解するだけでなくて、身をもってわかる。
それによって何も変わらないこの世界を多面的に捉えなおす。
そんな学問だと思います。
この本は面白くない人にはとても面白くないでしょうが、ぼくにとっては忘れられない一冊になりました。
映画のようなドラマチックなことは収められていない、どこかの誰かの物語。
事実は小説より奇なりというが、まさにそのとおりだと思う。
ちょうど今、かえるが鳴き出した。それだけのことが妙に心に残ることがある。
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