NO29:ぱちん。

移築する時、スイッチにはこだわった。

本当は真鍮のプレートのものがよかったのだけれど予算の都合で諦めた。

海外からの個人輸入も考えたが、電気屋さんが安全性にこだわって国産のものを探してきてくれた。

20代そこそこの電気屋の彼には本当に迷惑をかけた…初めての古民家の現場で見たことも無いものを探すのには苦労しただろう…

「…深夜に作業してたら、なんか音がするんですよ…ここなんかいますよ…」

という失礼なことを言ってたのもいい思い出だ。

今のところ「なにか」には出遭っていない。

パチンとスイッチを触るたび時々思い出す。

「自分、社会人野球の為に入社したんすよ。」


といって笑っていた彼のことを。


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