三十四冊目【ぼくらの民主主義なんだぜ】
【ぼくらの民主主義なんだぜ】
著者 高橋源一郎
出版社 朝日新書
民主主義とは、意見が通らなかった少数派が、それでも、「ありがとう」ということのできるシステムである。
朝日新聞に連載された「論壇時評」をまとめた一冊、各章短くて読みやすいです。とはいえ、さすが高橋源一郎、現実が物語りのようにうまく切り取られてまとめられていてるので、伝えたいテーマは明解でありつつも、けして決めつけの倫理観を押し付けるわけではなく、かといって突き放すわけでもなく、読者の側に静かに迫ってくる印象でした。それはこの国で暮らす誰もが民主主義のルールのうえで生きているのに、無頓着であること現状について深く深く問うているように感じました。
「で?君はどう思う?」という問いかけを前に、普段民主主義についてなど、選挙の仕組みの一部くらいしか考えていない自分のようなごく平凡な日本人は「うっ…」っと言葉につまる。意識してみると、僕自身そういったことに対して、懐疑的な怪訝な目線を向けるばかりで、その本質について考えてこなかったことを思い知らされる。訝しげに遠巻きに眺めていた民主主義というシステムのことを著者は生き生きとした「物語」として伝えてくれる。読み終わった時、「民主主義を悪者にしすぎていたな…」と申し訳なく思った。もちろん、ここでいう民主主義とは既存の大衆が思う描くものとは異なっていて「理想的に運用されたらば…」という話である。しかし、よくわからない泥沼のようなものだと思い込んでいた民主主義を理解するヒントがこの本にはありました。一点、章によっては、意図的に若者言葉で書かれていて、それはすごく読みにくかった。おそらく明確にターゲットとなる人物像があって、それは、民主主義に無関心な「若者」だと思うが、それがぴんとこなかったということは、自分がそこから離れているのだろう…やはり、というか当然35歳はもう「若者」ではないはずで、そろそろ後回しにしてきた様々な事柄と向き合わなければいけないように思ったと同時に、やはり積極的に既存の民主主義の権利を声高に叫ぶ。ということに関しての違和感もぬぐえないわけで、タイトルにもあるように「ぼくらの…」という姿勢で、他人事ではない、自分たちの生活の根幹にある問題として、新しい?否、本来あるべきはずの民主主義が生き生きと活用される社会というものを「想像」することからはじめなくてはいけないと思いました。
0コメント