五冊目【ご先祖様はどちら様】

【ご先祖様はどちら様】

著者:高橋秀美

出版社:新潮社


著者の高橋秀美さんが自らの先祖を辿る。それだけの本なのだけど、これがなかなかとても面白い。序章の「俺たち縄文人」からすでにやられた感があったのだけど、続く「ご近所の古代」そして「爆発する家系図」あたりになると、まったく知らない「高橋」の祖先について興味が湧いてくる。こういった本にありがちな祖先の有名人探しに徹してなく、妙に冷めた感じの人が多く出てくるのもまた面白い。一方で赤の他人とも祖先の繋がりで「遠縁の親戚」であることがわかると「俺とお前は似てる…これも血筋だな」みたいな、なんか根拠のないような話すら説得力が増すから不思議なものだ。

実際の話、祖先を辿れば皆「神様」に行き着く、それは日本の系図を辿れば最後(最初?)には必ず「天皇」に行き着くからだ。僕の苗字は「朝倉」だけど【朝倉 苗字 由来】と調べれば、現兵庫県の日本海側である但馬国養父郡朝倉が起源(ルーツ)である、日下部氏(古代日下部の職名から起こり、多くはその部民の末。草壁ともいう)。ほか朝倉君、桓武天皇の子孫で平の姓を賜った家系である平氏(桓武平氏)、中臣鎌足が天智天皇より賜ったことに始まる氏(藤原氏)秀郷流などにもみられる。愛知県、長野県、北陸など全国に多い。


といった具合に日下部性の狭穂彦王や桓武天皇・中臣鎌足に繋がる。ちなみに桓武天皇は第50代天皇…有名な逸話は784年に長岡京(現・京都市西京区)に都を移し、天災や身内に祟りが起こったので794年に平安京(現・京都市内)に都を移したこと。そして、蝦夷征討を行いました。坂上田村麻呂の話は有名ですね、こうしてご先祖様のことと思うと不思議と自分ごととして歴史が見えるから不思議なものです。皆さんもご自身の苗字から祖先を辿ってみると面白いですよ。ちなみに桓武天皇の母親は百済から来た帰化人だったそうなので韓国との繋がりも感じられます。いまより太古のほうがよほどワールドワイドですし、多様性のある日本の姿も想像できますね、ちなみに蝦夷征討の坂上田村麻呂も百済からの帰化人だったそうです。桓武天皇は長身だったそうなので僕の背が高いのもそこから…

しかし、もちろんそんなの正しいかなんて確認のしようがありませんよね。それに正しいかどうかが問題ではなく、誰もがかならず誰かの子孫であることで、自分ひとりの人生が「誰かからのリレーのバトンを繋いでいる」そんな感覚を感じることが可能になります。そして実は人はみんなそういう物語を必要としています。だから「君の名は」がヒット作になるんです。

戦後の日本は「家」という仕組みそのものを解体して、家族を分けることでおおきな消費を作り出しました。それ自体が悪いことであったかを問うことも必要かもしれませんが、そういったことは早々に「鎮魂」怒りや恐れは鎮めて、未来について学べることを掘り出さないといけないと思います。その第一歩に適しているのは、歴史や法律や海外情勢を学ぶことよりも「自身の祖先のことを調べる」ことではないかと僕は思います。そうするとこの狭い世界に他人なんてものがいないことに気がつけると思うのです。




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