No:14 ことん。

長い時間をかけて店内を回っていたお客様が
嬉しそうに器を会計に持ってきてくれた瞬間は
やはり器屋冥利に尽きる瞬間だ。

両の手に包まれていた器は手のぬくもりで暖かいのだ。

思うに[生きている]ということは温もりがあるということだ
手で温められた器はその刹那
ひな鳥のようなほのかな温もりの宿った生命のようだ。

長く使い継がれていくということは
この温もりのバトンを絶やさず繋いでいくことに他ならない。

だから僕らはひとつひとつ手にとって器を選ぶ。

その行為が温もりを繋ぐものだと信じて日々器を磨き

ことん。

とやさしく棚に並べる。



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